イルカ好きのためのサークル イルカネットの会報より抜粋
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連載/キャンプの旅 in御蔵島
 〜前編・旅にハプニングはつきものです〜

(メンバー:S.Sさん寄稿)

 学生時代から、友人に誘われ続けた御蔵島行き。何となく行こうという気が起こらないまま2年がたってしまいました。そして、今年の夏、ようやく重い腰をあげて御蔵島へ行くことに!
 それからは、今まで行くことを拒んでいたのが嘘のように、旅が楽しみになりました。今回の旅は一週間の日程で、メンバーは4人。私にとって今までで一番長い期間の旅になります。
●8月3日
 出発当日。旅の支度をして友人宅に集合しました。ものすごい荷物を抱えて友人宅に着くと、すでにメンバーのひとり、友人のいとこ(カズ・21才・男)が来ていました。
 3人で荷物の振り分けなどをしていると、友人が含み笑いしています。何かありそうな気配。そして、「しのぶにニュースがあります」と言うんです。「何?」と聞き返すと、「私、行けなくなった。えへへ」と言うじゃありませんか。なんだとー! 
 しばしパニック状態の後、理由を聞くと『腎炎』になったとのこと。ジンエン? 何それ? 一週間前から調子が悪いのは聞いていたけど……、どうやら悪化してしまったらしい。「そっか」と言ったものの、何ともフクザツな気分。友人本人はというと、そんな状態を楽しんでいるご様子。「思いっきり、楽しんできてね」 いや、楽しんできてねって……、とも思ったけど、私の方もそれはそれで楽しいかもと思えてきました。
 そんなわけで、過去1回しか顔を合わせたことのないカズと、もうひとり、友人の中学時代の親友、みおちゃん(21才・女。こちらとも1回しか会ったことがない)と私の3人という、誰が想像したでしょうというようなメンバーで、御蔵島1週間の旅に出ることになりました。
 友人と新橋で別れて、竹芝桟橋に向かいます。それにしても3人ともすごい荷物です。出発前からすでに肩が砕けそうです。特にみおちゃんは、人間がひとり入っているような細長い肩掛けのバックなので安定がとれません。でも手助けはできないんだー。許せー。
 この大荷物の原因は、今回の旅をキャンプで過ごそうとしていることにあります。まず、三宅島のキャンプ場にテントをはり、1泊。次の日、御蔵島に渡り、バンガローに3泊して、また三宅島に戻りテントに1泊という日程になっています。唯一の接点である友人がいなくなった今、私たち3人で仲良くやっていけるかな。しかも、キャンプ。
 早めに着いた桟橋でおにぎりを食べている間、話はつきず、なんの違和感もない。なんだ、心配することないじゃん。これなら、1週間やっていけそうです。
●8月4日
 カンカンカン。ものすごく大きな鐘の音で目が覚めました。「まもなく三宅島に到着します。お降りの方はお早めに……」、もう着いたのか。急いで荷物をまとめて出口に向かいました。窓の外に緑が見えます。
 どうやら船は錆ヶ浜の港に着いたようです。予定では三池浜に着くはずだったのですが、変更があったんですね。島に一歩降りると、さすがにまだ朝の5時なので半袖では涼しい。私たちはとりあえず三池浜に向かおうと、バスに乗りました。
 バスに乗っている間に、だんだん空が明るくなり、暑くなってきました。バスの運転手さんと話をしていると、御蔵島行きの船はほとんど錆ヶ浜の港からでることを教えてくれました。しかも錆ヶ浜のキャンプ場は広いし、近くに温泉があるそうです。私とみおちゃんは温泉にとてもひかれました。話し合いの結果(というより私とみおちゃんの意見で)、やっぱり錆ヶ浜にもどることに決まりました。けれど、私たちが乗ってきたバスは三池浜キャンプ場前が終点。次のバスは1時間後なので、ひとまず海でも眺めてバスを待つことにしました。
 三池浜にキャンプをはっているおじさんに話を聞くと、ここ3日間、御蔵島行きの船は出ていないそうです。おじさんも御蔵島に渡れずに3日間ここでキャンプしているとのこと。私たちもこのおじさんと同じ運命をたどることは十分にあり得る……。ここまで来てそりゃないよ。頼むから船よ出ておくれ。
 バスが来たのでおじさんに別れを告げて乗り込みました。三宅島に着いて2時間たらずで島を一周することになるとは。錆ヶ浜に戻るまでの道には、噴火で流れ出た溶岩を見ることができました。溶岩は真っ黒で、流れ出たまま固まっています。着いて早々観光してるなー。
 錆ヶ浜についてさっそくテントをはりました。とにかく早く落ち着きたい、もうその一心ですね。島について約3時間、ようやくひと休みです。空はどんどん青くなっていって、太陽もギラギラしてきました。これから1週間こんな日が続くんだなと思うと、今年の夏は夏らしく小麦色の肌になれるー、と嬉しくなります。それが後々ひどいめにあうとは知らずに……。私は荷物から解放されてテントの中でゴロゴロしていました。みおちゃんは本を読んでいます。カズは温泉の方を見に行っているようです。今回の私の旅の目的は「自然の中で何もしないでゆっくりと休む」です。もちろんメインイベントはドルフィンスイムですが、とにかく緑の中に自分を置いて、何もしない時間がほしかったんです。散歩したいときにして、寝たいときに寝る。うーん、サイコー。さっそく初日から実践してしまいました。
 ブランチをインスタントラーメンで済ませて、海に出ることにしました。三宅島では、明日に備えてシュノーケルの練習をすることになっています。3人ともシュノーケルは初めてです。友人は練習しないと本番で失敗するからと、自分の体験談を話してくれました。彼女はしきりと「海は恐い」と連発していましたが、私はそう言われながらも頭のどこかで「大丈夫だよな」と思っていました。これが失敗のもとなんですよ、みなさん。シュノーケルなんて軽い軽いとか思ってると、マジで溺れてしまいます。本当に恐かったですよ……。
 まずシュノーケルをしっかり装着して、押し寄せてくる波に向かいます。このとき、私の頭の中にはシュノーケルの息の吐き方はどうとかそんなことしかなかったので、いきなり足が地に着かなくなって自分が首まで海に浸かってしまったとき、それはそれはパニックでした。波が来るたびに自分の体がすごい力で沖へもっていかれそうになります。どんどん波は押し寄せ、上から波がかぶさって完全に水中に入ってしまいます。シュノーケルに水が入って息ができない! 死ぬ! 水中でシュノーケルをはぎ取って、必死で浜に向かって水をかきます。やっとの思いで浜に着くと、放心状態です。ここでやっと「海は恐い」と心の底から思わされました。
「よし」、根性を決めて再度チャレンジです。ちょっと頭を使って、今度は波が自分の前に来たときに思い切って波の上にかぶさるようにジャンプしてみました。そうしたら、あんなに恐い波の向こう側は意外に穏やかで、私の体もちゃんと浮いていました。
 さあ、今度はシュノーケルの使い方です。とにかく落ち着いて、ゆっくりとやってみます。「大丈夫、大丈夫」と思いながら。何とか息ができるようになり、少し遠くまで行ってみました。海の中を眺めてみます。その先は暗くなっていて底も見えません。海は深い! 
 だんだん楽しくなってきてその日は何回も潜りました。一時は「もう海に入れない」とまで思ったけれど、この楽しさを知れて本当に良かった。
 夜になって買い出しに行きました。三宅島には何でも置いてあるスーパーがあって、食料は豊富に揃えられます。御蔵島ではそうはいかないので、明日から3日間の食料をここで買い揃えていかなければなりません。買いすぎても重いだけだし、ちょっと少なめに買いました。
 その日の夕食はスーパーで買った焼きおにぎりにしました。これからこんないいもの食べれないかも知れないと、3人ともしっかり味わって食べました。五百円で入れる温泉は、露天風呂もあって夕日が一望できます。これはおすすめですね。3人用のテントに人が3人、プラス荷物でぎゅうぎゅうな状態で眠りました。こんな状態で眠れるかな…なんて心配は私にはいりません。お休み3秒です。どこででも。

これらの記事は1997年〜1998年に発行されたイルカネット会報誌の
記事を編纂したものです。電話番号や住所、水族館の営業情報など
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