必ずしも印刷する必要はない
手づくりには手づくりのよさがある
自身で行う作業を考える
予算重視か、仕上がり重視か
必ずしも印刷する必要はない
編集・印刷代にはさまざまな内訳があります([制作費(印刷代)の内訳]の図を参照)。費用を抑えることを考えるならば、この内訳を減らしていくのが一番の早道です。
 極端な例を挙げます。自分史を1部だけつくって家族に残すというケースです。

●原稿はご自身が書きます。ワープロなりパソコンで原稿を書くのが早道ですが、手書きしたものをご家族やお知り合いに打ってもらってもいいでしょう。もちろん、手書き原稿をそのまま綴じるという方法もあります。
●ワープロなりパソコンのソフトで体裁を整え、全ページをプリントアウトします。
●表紙をつくります。大きめの文房具屋さんに行けば、いろいろな紙が1枚から売っているので、好みのものを選びます。ボール紙に和紙や布を貼り付けて表紙にすると、上品な仕上がりになります。表紙の文字は、ご自身が筆で書いたり、ワープロの文字をプリントしてのりで貼りします。
●ホチキス止めするか糸でかがって製本します。近所にOAサービスセンターがあれば、1部でも製本してもらうことができます。
※参考文献:『ワープロで私家版づくり』栃折久美子、創和出版、2060円
 参考HP:http://www2.odn.ne.jp/reliure/topics.html


 いかがでしょうか。これでこの世に1冊だけの自分史が完成しました。
 もし10部つくりたければ、プリントアウトしたものを10枚コピーすればよいのです。コンビニエンスストアなどでコピーすれば、たいていは1枚10円です。袋とじなどの形で2ページずつプリントアウトしておけば、2ページを10部コピーして100円。全部で60ページとしても、3000円で済みます。ページが多く、コピー代が万の単位の金額になるようならば、印刷することを検討したほうがよろしいでしょう。
 もっと極端にいえば、プリントするのは目次と前書きくらいにして、残りの本文はワープロなりパソコンで入力したデータをフロッピーに複写して添えることも考えられます。それを受け取って「読んでみたい」と思った人には、ワープロなりパソコンの画面上で読んでもらうか、自分でプリントしてもらうわけです。
 どちらも極端な例と思われるかもしれません。でも、文章化して残すということでは、どちらも立派な自分史です。つくる目的と予算にあわせて、作り方はいくらでも考えられます。大事なのは見た目よりも内容。ご自身の思いが詰まったものであれば、受け取った人はきっと大切に読んでくれることでしょう。
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手づくりには手づくりのよさがある
費用を抑えることは、業者に依頼する部分を減らして、自身でおこなう部分を増やす、ということです。「自分史を1部つくる」ケースは、大半を自身でおこなうもので、出費は紙や文房具の実費程度です。
 手づくりの本には、大量生産の本にはない手づくりの味わいがあります。多少文字が傾いていたり、のりがはみ出していても、自分で仕上げたという達成感は代え難いものです。またそれほどまでに注いだ情熱は、手にする人に伝わるものです。
 パソコン全盛のこの時代に、手書き文字にこだわったミニコミを発行する人もいます。手間はかかるでしょうが、手書き文字を通して制作者の人柄がまるごと伝わってきます。印刷や製本にお金をかけないと本がつくれないわけではありません。予算と仕上がりの兼ね合いを考えて、あなたらしい本づくりをお考えください。
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自身で行う作業を考える
では、印刷所なりの手を借りるばあいはどうすればよいか。上の考えに沿って、具体的にご説明します。[制作費の内訳]の項の図をご参照ください。

(1)原稿を自分でワープロなりパソコンで書くか、手書きしたものを誰かに入力してもらえば、原稿入力代が不要となります。

(2)その後、納得するまで推敲し、「業者に手を入れてもらう必要がない」と判断すれば、校閲の代金が不要となります。(それでも、第三者が読めばおかしい部分があるものですから、ご自身だけでなく、なるべく多くの方に目を通してもらったほうがよいでしょう)

(3)ご家族、お知り合いのワープロやパソコンに長けた人に版下(印刷用の原稿)をつくってもらえれば、版下代(文字組版代、校正・訂正代)は不要となります。この場合は完全版下として印刷所に持ち込むことになります。印刷所によって、版下のつくり方を指定される場合もあるので、事前に何ページかを見本でつくり、プリントしたものを持参して確認しておいたほうが無難です。

(4)印刷を依頼する先は、小さな印刷所がよいかと思います。大部数の印刷を主とするところに持ち込んだりすると、大げさな機械で高価な刷り方をするので高くつきます。ページ数と印刷部数にもよりますが、300部程度までならば、商店街などで印刷機を2台か3台置いて刷っているようなところに相談することをおすすめします。写真をたくさん使いたいとか、カラーのページを入れたい場合は、それ以上の規模の印刷所にも相談することをおすすめします。

(5)印刷部数の多い少ないは、印刷費にはあまり影響しません。仮に100部印刷して30万円と言われた場合、10部なら3万円、200部なら60万円かというと、そうではないです。用紙代と製本代が増減する程度です。むしろ影響が多いのは、ページ数のほうです。1ページ増えたために万の単位で出費が増える可能性はあります。この点は、印刷所の機械の都合(大きな紙に刷るのか、小さい紙に刷るのか)によって事情が異なりますので、よくご相談ください。

(6)印刷に詳しいお知り合いがいれば、面付けまですることも考えられます。私が関わるミニコミでは、A5判(148ミリ×210ミリ)の版下をA3の台紙に4枚貼り込んで印刷所に渡しています。こうして面付代(1ページあたり十数円)を節約しています。印刷所によって面付けの仕方もいろいろですから、事前によく相談してください。

(7)ご自身で製本すれば、製本代を節約することができます。中綴じという、週刊誌のようにホチキスで止めるつくり方ならば、針先が90度回転するようになっているホチキスを使います。この場合は、刷り上がったバラバラのままの印刷物を受け取り、ページごとに折って重ねて、ホチキスで止めます。最後にページをめくる側をカッターで切り揃えれば、雑誌形態の本の仕上がりです。製本用ホチキスは、数百円のものから数千円のものまで、いくつか種類があります。いちばん安価なものでも、コピー用紙なら10枚程度(ページ数で40ページ)、やや薄手の用紙なら20枚(80ページ)くらいまで綴じられます。

(8)仕上がったものを製本所まで受け取りに行けば、発送代(送料)が不要となります。
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予算重視か、仕上がり重視か
一つ付け加えたいことがあります。それは、複数の人の手をかければ、仕上がりがより練れたものになっていくということです。

 これまでの説明と矛盾すると思われるでしょう。でも、複数のアイデア、複数の視点を加えて、検討していくことによって質が高まるのは事実です。
 プロの業者は経験を重ねていますから、文章上の表現のわかりにくさを指摘したり、見出しを適切に追加する作業にも慣れています。印刷についても、よりよい(安い)印刷の方法、版下の作り方を何通りも知っています。プロのそういった知恵を得ることも、ケースバイケースで必要なことでしょう。
 文章に自信がなければ、ご家族やお知り合い、場合によってはプロの業者に推敲を依頼するとか、やっぱりきちんとした本にしたいから印刷業者に頼む、といった柔軟性は持っていたほうがよいでしょう。そのぶん費用はかかりますが、費用をかけても仕上がりを練り上げるか、予算を重視するか、最後はその選択になります。

 繰り返しになりますが、予算と「どういう本に仕上げたいか」というイメージとをよく考慮して、どの部分を自身でおこなうのか、どの部分を業者に依頼するのか、納得がゆくまでご家族や業者と相談し、検討なさってください。
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