「○ページだといくら」という基準はない
費用についてのほんの一例
費用を調べる2、3の方法
納得するまで相談を
「○ページだといくら」という基準はない
「自分史(ミニコミ)をつくろうと思うのだけど、費用はいくらか」と、誰でもはじめに質問します。私はまず「予算をどのくらいでお考えですか」と尋ねることにしています。もし見当がつかないといわれれば、「ではどんな本をつくりたいのですか」と、いくつかのサンプルを提示して教えていただくようにします。
 相手の懐具合を伺ってやろうとか、少額だったら相手にしないとか、そんなことではもちろんありません。
 印刷物をつくるには、細々とした作業がたくさんあり、用紙や製本などでも多様な選択肢が用意されているのです。このため、どれだけの手間をかけるのか、またどういう選択肢を選ぶのかによって、予算はいくらでも変化するのです。
 ですから、大まかな予算額を決めておいて印刷物の仕上がりをイメージしていくか、逆に仕上がりのイメージから予算を算定していくか、このどちらかの方法で話を進めないと、費用が提示できないのです。

 わかりやすく説明するため、結婚式を例に挙げましょう。まず考えるのは、式場のグレードや出席者の人数でしょう。パンフレットを比較しながら、はじめに式場を決めて、いよいよ式場の担当者との交渉です。案内状は何通送り、出席の見込みは何人で、料理は一人あたりいくらにするのか、お色直しは何回するのか、お花はいくつ用意するのか……といった細目を選択してゆきます。その内容によって、費用は大きくもなるし、小さくもなります。もし「総額でこの額に抑えたい」と希望すれば、「その予算なら料理はいかほどのもので、花はこれくらいのもので……」と、条件を言われることでしょう。
 これとまったく同じで、印刷物づくりでも、原稿は手書きなのかワープロなのか(入力の作業が必要かどうか)、文章の修正や内容のチェックを誰がするのか、カラー写真を使うかどうか、表紙をハードカバーにするのかどうか、といった細目によって、費用が変わってきます。逆に、大まかな予算があるならば、その範囲で抑えるためにどういう作業をすればいいのかが決まってきます。
 予算か仕上がりイメージ、そのどちらかが示されなければ、費用についてはお答えできないのです。
▲本づくりの工程(クリックすると大きくなります)
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費用についてのほんの一例
とはいえ、「お答えできません」では、せっかく読んでくださっているのに申し訳ないので、一例を挙げておきます。
 これは、私が引き受けるとした場合に考えられる仮の例です。同じ条件ならこの金額でできるというものではありません。また他の業者の料金とも単純には比較できません。条件次第で金額が変わることの目安として見ていただけたら幸いです。

【条件】
A5版、64ページ、原稿文字数5万字(400字詰原稿用紙125枚)、200部、簡易製本

●これを、版下(印刷するための原稿)はご自身で用意し、印刷・製本だけをする場合
  印刷代・用紙代・製本代で 7〜8万円

●文字原稿はフロッピーデータでいただき、当方で校閲(誤字脱字のチェック・内容の確認)と版下づくり、印刷・製本をする場合
  上記プラス 10万円〜 (計17万円〜)

●原稿の入力から校閲、版下づくり、印刷・製本をする場合
  上記にさらにプラス 数万円〜 (計約22万円〜)

●口絵ページを何ページか入れる場合
  プラスすること もう数万円〜 (計30万円〜)

●上製本にする場合
●インタビューして原稿を書き起こす場合
  プラス ???万円

 当然のことながら、部数や冊数の増減でも費用は変わります。また、凝った用紙を使いたい、イラストを入れたい、特殊なサイズに仕上げたい、などの注文があれば、費用はそれなりに変動します。
 ……あまり参考にならないですね。

 ちなみに、近頃は出版社や大手印刷所も自費出版サービスを始めていて、新聞に広告を出したりもしていますが、そういうところに依頼すると、最低ラインは100万円だとお考えください。
 大手では、考え方の違いもありますが、「少部数をかんたんな製本で仕上げて、費用を抑える」という作り方は採用しません。それなりの設備と人手を費やして、ハードカバーのきちんとした本をつくろうとするため、予算は大きいのです。
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費用を調べる2、3の方法
もう少し具体的に、実際の費用を知るための方法を考えてみましょう。

 一つは、身近に自費出版をした方があれば、その人に教わることです。話を伺ってみて、好感触が得られたら、出版元を紹介してもらうのもよいでしょう。もしお知り合いがなければ、自費出版体験者のホームページを閲覧したり、東京・品川区にある自費出版図書館(http://www.mmjp.or.jp/jst/index.html)で話を聞くなどの手もあります。

 二つ目は、先に述べたようにご自身なりにつくりたい本のイメージを固めて、いくつかの印刷所で見積もりをしてもらうことです。その際は、なるべく具体的に条件を提示しましょう。先に述べたように、条件が曖昧だと内容が詰められませんし、業者によっては「せっかくだからハードカバーにしましょう」「カラー写真は入れるべきだ」などと、条件を引き上げて値段を上げていくようなところもあるので注意が必要です。作業内容も検討しないで「全部でいくらです」と提示するところも要注意です。見積もりを面倒くさがったり、金額を一切示さずに「まあまかせてくれ」というところは論外です。ともあれ、複数の業者に尋ねてみれば、だいたいの目安も立つかと思います。

 三つ目は、作業ごとに専門業者に見積もってもらうことです。たとえば、印刷用の原稿(版下といいます)は、ワープロに長けた知り合いに謝礼を払って作ってもらうことにして、印刷と製本の部分だけ印刷屋さんに見積もってもらうという方法です。これならば、「A5判サイズで100ページ、製本はこんな具合」というように、同じ条件で複数の印刷屋さんに見積もってもらえるので、比較もしやすいでしょう。
 ワープロやパソコンの入力業者で、「DTP」とか「文字組版」を業務内容とするところならば、編集や版下制作の部分を見積もってもらうこと可能です。この場合も、「原稿用紙で何枚くらいで版下まで」などと、希望の条件をはっきりと提示することが肝心です。
 ただし、「DTP」と看板を掲げていても、写真処理や図表つくりを専門としていて、編集や印刷のことはわからない業者もいます。その点はご注意ください。([フロッピーの利用・DTP]参照)
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納得するまで相談を
以上いくつか述べましたが、ポイントとして付け加えたいのは、話を聞いた業者なり担当者が、信頼できそうな人かどうかは大事なことです。
 担当者が「カラー写真を入れるべきだ」と言ったとしても、それが担当者の経験に照らしての意見ならば、一概に「ぼったくりだ」とはいえません。かくいう私も、「あと○万円出してもらえれば、表紙の紙をもっと工夫することができる」などの意見を述べることがあります。「それだけの負担増が可能ならば、よりよい本がつくれる」との気持ちからです。

 本をつくるのは他のサービス業と同じで、少々割高でも満足できればよし、安くても仕上がりが悪ければ不可、という面があります。値段の高い安いはもちろん重要ですが、肝心なのは、その額に妥当性があるかどうかです。
 本づくりに不慣れ(多くの人は初めて)なのだから、疑問だらけなのは当然です。わからないこと、納得できないことは、遠慮なく質問してください。
 そうして信頼できそうな業者に出会ったら、業者からの提案を提案として再考する柔軟性が必要です。その場で判断できないならば、返答は後日にして、ご家族やお知り合いに相談してみることです。よい業者ならば、「時間がかかってもいいから、充分に納得してからつくりましょう」と言うはずです。
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