「自分史(ミニコミ)をつくろうと思うのだけど、費用はいくらか」と、誰でもはじめに質問します。私はまず「予算をどのくらいでお考えですか」と尋ねることにしています。もし見当がつかないといわれれば、「ではどんな本をつくりたいのですか」と、いくつかのサンプルを提示して教えていただくようにします。
相手の懐具合を伺ってやろうとか、少額だったら相手にしないとか、そんなことではもちろんありません。
印刷物をつくるには、細々とした作業がたくさんあり、用紙や製本などでも多様な選択肢が用意されているのです。このため、どれだけの手間をかけるのか、またどういう選択肢を選ぶのかによって、予算はいくらでも変化するのです。
ですから、大まかな予算額を決めておいて印刷物の仕上がりをイメージしていくか、逆に仕上がりのイメージから予算を算定していくか、このどちらかの方法で話を進めないと、費用が提示できないのです。
わかりやすく説明するため、結婚式を例に挙げましょう。まず考えるのは、式場のグレードや出席者の人数でしょう。パンフレットを比較しながら、はじめに式場を決めて、いよいよ式場の担当者との交渉です。案内状は何通送り、出席の見込みは何人で、料理は一人あたりいくらにするのか、お色直しは何回するのか、お花はいくつ用意するのか……といった細目を選択してゆきます。その内容によって、費用は大きくもなるし、小さくもなります。もし「総額でこの額に抑えたい」と希望すれば、「その予算なら料理はいかほどのもので、花はこれくらいのもので……」と、条件を言われることでしょう。
これとまったく同じで、印刷物づくりでも、原稿は手書きなのかワープロなのか(入力の作業が必要かどうか)、文章の修正や内容のチェックを誰がするのか、カラー写真を使うかどうか、表紙をハードカバーにするのかどうか、といった細目によって、費用が変わってきます。逆に、大まかな予算があるならば、その範囲で抑えるためにどういう作業をすればいいのかが決まってきます。
予算か仕上がりイメージ、そのどちらかが示されなければ、費用についてはお答えできないのです。 |